位置

Guide to Basilico

PART5

around the theatre

劇場周辺

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ポルタ橋

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「変わらないな」
川面を見ながら、ダンネマン氏がつぶやくようにいった。
「店も。味も。人も」
結局の所、ダンネマン氏の話はそれで終わりであった。思い出したようにステパンに別れを告げると、川沿いの道を去っていってしまった。
その姿を見送ったステパンは複雑な想いを残されたかっこうで、いましばらくポルタ橋の上にいるしかなかった。 名状しがたい気分がしだいにふくらんでいく。この気分のまま、劇場に帰るしかないのか、と思ったときである。ふと、兄のもう一つの話を思い出した。マリイザさんの脚本である。
旅をする種子の話である。どんな話なのであろうか。そう考え出したら急に楽しくなってきた。
そうだ、マリイザさんの脚本をドノバンだけでなく、キキちゃんにも読んでもらおう。そんなことまで考えもした。
こうして、いつもの自分に戻ったステパンであるが、ちょっと違うことも考えていた。何年ぶりだろうか。今度は自分が兄の家へ訪ねていこうと。

     バジリコ観光案内 PART5 完

椅子